10-ヒプノの時間【悩みの素顔】今回は「悩みの素顔」についてお話します。 「悩みの素顔」ってヒトみたいな表現だけれど、一体何? 悩みに素顔があるなんてどういう意味だろう?と思われると思います。 カウンセリングなどでお悩みを伺いながら、色々な質問を繰り返していくことで、ある特徴的な感情が根底にあることがわかります。その周りを幾つもの複雑な想いがベールのように覆って膨らみ、大きな悩みとなっていることが多いのです。 これら問題のベールを削ぎ落としていくと、悩みの大元となっている感情、つまり「悩みの素顔」が明らかになっていきます。 では、「悩みの素顔」を明らかにする方法について、具体的にお話ししていきましょう。 前回のコラムで取り上げた「悩みの仕分け」は、出来ましたか? まだ実行されていない方は、先に悩みの仕分けをしてみてください。 ここでは「悩みの仕分け」に則って、現在抱えている悩みを (1)「重要」な悩み (2)「保留」 (3)「廃棄」 の3つに分け、この仕分け済みの悩みリストを用います。 まず、「廃棄」してもよい悩みを書き出した紙は、思い切って丸め、ゴミ箱に捨てましょう。 次に「保留」の紙は、文字通り「保留」にして、そのまま保存します。 そして今回は、お手元に「重要」と書かれたリストを用意しましょう。 重要な悩みが複数ある場合には、解決したい順に番号を振り、一番解決したい悩みを1つだけ、新しい紙に書き出します。 ではここで、Aさんの例を挙げてお話ししましょう。 Aさんは、「言いたいことをうまく伝えることができず、黙り込んでしまうので、相手をイライラさせてしまう」という悩みを書きました。 質問1:「それは何故、問題なのか?」と、紙に書きます。 Aさんは、「言いたいことが言えないので、自分の想いを伝えることができない」と、答えを書きました。 質問2:「この悩みの、どこが問題なのか?」と書きます。 Aさんは、「言いたいことをそのままストレートに言うと、相手を傷つけてしまったり、相手から嫌な人間だと思われるかもしれない。そう思うと、怖くなって黙り込んでしまう。その結果、相手をイライラさせてしまう。」と、答えました。 質問3:「この問題を解決するために、あなたはどうしたいのか?」 Aさんは、「相手を傷つけずに自分の気持ちを伝える言葉が、すぐにひらめくようになりたい。」と、答えました。 これらの受け答えから、Aさんの悩みの根底には、「嫌な人だと思われたくない!」という想い、言い換えれば「いい人だと思われたい」という願望、そんな悩みの素顔が見えてきませんか? Aさんがそんな願望を持つ背景には、きっと何か原因となる体験があったと考えられます。 例えば、幼い頃から怒られてばかりで褒められることが少ない子どもは、両親や先生に認めてもらいたいという想いが強く、知らず知らずのうちに相手の顔色を伺うようになります。 そのため、大人になっても自分に自信を持つことができず、自己評価が低くなるのです。 もちろん、相手の気持ちを思いやる優しさは、とても素晴しいことです。 ですから、普段から自分自身が、その良い部分を認めてあげることが大切です。 それに、言いたいことをそのまま伝えても、優しさが減ることはありませんね。 今の自分を否定するのではなく、認めることから、その先の道が広がっていきます。 さて、Aさんのお悩みに戻ります。 Aさんの場合、「言いたいことを言って、相手を傷つけるかもしれない」 と、考えるために黙り込んでしまい、相手をイライラさせているようです。 相手がイライラしていると感じると、心が萎縮して、ますます言いたいことが言えなくなってしまうのでしょう。 ではここで、Aさんと相手の立場を入れ換えて考えてみましょう。 もし、あなたが相手の立場になった場合、Aさんにどうしてもらいたいですか? 私なら、言いたい事は言ってもらいたいと思います。 言い方によってどう感じるかは、受け取る側によってそれぞれ違いますから、まずは言いたい事を心の中から外に出す努力を優先して欲しいですね。 なぜなら、相手に黙っていられると、こちらもどうして良いか、解らなくなってしまうからです。 もし、言葉がすぐに浮かばない時は、「少し考えたいから、待ってね」といった一言があると良いのではないでしょうか。 うまく伝えられるかどうかはともかく、Aさんは、まず自分の気持ちを話してみることが大切です。とっさに言葉に詰まってしまったり、話すことに慣れていない人は、普段から自分の気持ちを紙に書いてみたりして言語化すること、表現する事に慣れておくことをおすすめします。 言いたいことをそのまま言っても、言い方を多少変えても、つまり使う言葉がどのようなものであっても、そこに相手を思う優しさがあり、心をこめて話せば、誠意は必ず伝わると信じましょう。相手が傷つくかどうかは、受け取る側の問題だと割り切ってみましょう。 悩みの中に、だれか別の人との関係が含まれる場合、このようにいくつか質問を重ねる事で、自分の問題と、受け手側の問題とを切り離して考えられるようになっていきます。 Aさんのように、他人の評価を気にするのは悪いことではありません。 是非、評価に振り回されず、自分らしさを見失わないよう、自分の心の舵をにぎるのはいつも自分であることが大切なのです。 |